はじめまして。
玉乃光酒造株式会社の代表取締役社長を務める、羽場洋介です。
酒造メーカーとして350年以上の歴史があり、京都市の伏見区に本社を構えます。
私は2023年9月に社長に就任し、14代目の蔵元として、日本酒に向き合っています。
出身は三重県松阪市で、高校卒業後は大阪大学に進学し、その後、大学院に進みました。
小さい頃からロケットが好きで、理系の学生でした。
人生の分岐点となったのは、大学院在学中にバックパッカーで中国を旅していた際、偶然、オランダ人の公認会計士の人に出会ったことです。
その人の話は魅力に感じる部分も多く、私も公認会計士の仕事に興味を持ち、帰国後はダブルスクールで勉強をしました。
そして、大学院を卒業後、PwC京都監査法人に就職し、公認会計士として社会人のキャリアをスタートさせました。
7年ほど勤務した後、株式会社AGSコンサルティングに転職し、公認会計士のスキルや経験を活かしたコンサル業務に従事しました。
その後は、その会社で出会ったお客様とのご縁もあり、株式会社ワールド・ワンに取締役(現任)として参画し、2023年9月に玉乃光酒造株式会社の代表取締役社長に就任しました。
玉乃光の酒蔵は義理の父親が13代目の蔵元だったのですが、何度か話し合いを重ね、社長就任の話を受ける覚悟を決めました。
▼会社の事業内容を教えてください
玉乃光の酒蔵は京都の伏見にありますが、元々は和歌山がルーツなんです。
和歌山市の寄合町で、紀州藩第二代藩主「徳川光貞」の時代に酒造免許を得て創業したのが始まりです。
そのため、当時は紀州徳川家の御用達蔵としてお酒造りをしていたようです。
その後、戦争の影響を受け和歌山での酒造りが難しい状態になり、1949年に京都の伏見で酒造りを再スタートさせました。
戦後、当時では珍しかった「米100%」の純米清酒の開発を進め、純米吟醸酒を浸透させた先駆者として、業界では話題となりました。
350年以上の歴史を受け継ぎながら、より日本酒の裾野を広げるために、既存のアンテナショップの他、2023年11月に「純米酒粕 玉乃光 ホワイティうめだ店」をオープンしたところです。
立ち飲みという業態で、1人でも多くの人に日本酒を飲んでいただき、日本酒の魅力に気付いてもらえたらと思っています。
▼会社の特徴・強み
大きく分けて2つあります。
1つ目は、350年以上の歴史があるという点です。
ブランドは長い年月を経て築き上げられるものです。
玉乃光の歴史が脈々と続いていることは、日本酒造りのノウハウが蓄積されているだけではなく、お客様に必要とされている価値があるという証明だとも感じています。
戦後、先駆けて純米大吟醸酒の開発に挑戦するなど、業界に与えたインパクトもあり、自分たちの酒蔵だけでなく、業界全体の発展のために寄与した功績などを評価していただき、多くのお取引先様との関係が続いているのだと思います。
2つ目は、手造りでお酒を作っているという点です。
江戸時代から続く製法を受け継ぎ、極力機械を使わず全て手造りで作っているのが特徴です。
自動蒸米機や大型機械は使用せず、甑(こしき)という蒸し器を用いて、米麹づくりも全て手造りです。
三段仕込みで手間暇をかけており、酒母に麹、蒸米(むしまい)、水を加え、「添仕込」「仲仕込」「留仕込」を行います。
手造りの手法で、米100%の純米酒を作り続け、日本の伝統文化を守りながら、次世代に伝えていきたいと考えています。
▼社内の雰囲気
現在、パートさん含め約70名のメンバーが仕事をしてくれています。
伝統ある企業ですので、良くも悪くも企業の風土は出来上がっています。
私が社長に就任してからは、個別での面談も随時行っており、良い部分を残しながら、より良くできる部分は少しずつ変えていこうと考えています。
酒造りの実作業は、経験の豊富な職人に任せていますので、私自身は、より良いお酒造りに必要な環境整備と事業開発を進めています。
玉乃光は「伏水」という水と、厳選したお米を使用しますが、それを作るのは人ですので、人にもフォーカスしながら、これまでと違う観点で、酒造りに良い影響を与えられるようにしていきたいと思っています。
また、日本酒離れが言われる世の中で、その現実を経営陣と現場が受け入れて酒作りに取り組む必要があります。
私1人がやる気になっても事は進みませんので、従業員のメンバーと力を合わせながら、試行錯誤しています。
▼今後、会社で実現したいこと
玉乃光だからこそできる仕事をして、日本酒の文化を守っていきたいと思います。
日本酒造りは、その土地の気候や生活習慣が大きく反映されます。
私たちの酒蔵は長い歴史の中で、少しずつ成長しブランドを築き上げてきました。
しかし、現状維持は衰退の始まりですので、挑戦し続ける必要があります。
挑戦を続け、日本酒の文化を守り続けることで、私たちだからこそできる価値提供があると信じています。
梅田に立ち飲みのお店をオープンしたのも、まずは自分たちの日本酒を多くの人に知ってもらうためです。
日本酒を通して1人でも多くの人が幸せになってもらえるよう、良い文化を継承し、固定概念にとらわれず取り組みを進めていきます。
▼さいごに
私自身、物事はやってみないと分からないことばかりだと思っています。
そして大事なのは、「覚悟を決める」ことではないでしょうか。
覚悟がないうちは、「失敗したらどうしよう」など後ろ向きな気持ちが先行し、一歩踏み出せなかったり、始めても中途半端に終わってしまうことがほとんどです。
失敗をしない人はいませんので、覚悟を決めて、できるまでやり続けることで道は拓けると考えています。
これから私たちもたくさんの新たな挑戦をしていきますが、梅田の立ち飲みのお店などで日本酒を知ってもらい、少しでも日本酒の魅力に気付いてくれる人が増えれば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。