2026-07-02

工事屋が作ったロボットが、建設業界を照らす「光」となる。一社一社が誇りを持ち輝ける未来へ

株式会社弘栄ドリームワークス / 代表取締役会長 / 船橋 吾一
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山形県

「弘栄ドリームワークス」設立までの軌跡 ——専門工事業の価値向上を目指して

はじめまして。
株式会社弘栄ドリームワークスの代表取締役会長を務める船橋吾一です。

弘栄ドリームワークスは、親会社である「株式会社KOEI」の新規事業から誕生したベンチャー企業です。独自開発した配管探査ロボット「配管くん」を活用し、配管調査から課題特定、そして実際の工事までを一気通貫で提供することが可能です。社会的な課題であるインフラの維持管理にも寄与しています。

しかし、私たちの目的は自社の発展だけではありません。給排水や空調など「専門工事業」という、建設業界の中でもなかなか光が当たりにくい存在が、自らの価値を見出し、自立して光り輝けるような新しい産業の形を作りたいと考えています。

今回は、私たちがなぜ「工事屋」でありながらロボット開発に挑んだのか、その背景にある強い想いと、業界全体を活性化させる壮大なプラットフォーム構想について詳しくお話しします。

▼会社を襲った危機。その中で芽生えた「想い」の種
私の歩みをお話しする上で、まず「株式会社KOEI」について触れさせていただきます。
KOEIは山形にある72年続く老舗の総合設備エンジニアリング企業です。
大学や公共施設、病院、オフィスビル、マンションなど様々な建物の設備設計や施工を手掛け、東日本トップクラスの実績を持っています。私はこの会社の3代目として、1999年に入社し、2012年に社長に就任しました。

弘栄ドリームワークス構想のきっかけとなったのは、2008年に起きたある危機的な出来事でした。
当時、私は副社長でしたが、大口顧客が倒産し1億円の手形が紙切れになってしまったのです。それが発端となり、信用不安が広がり、仕入れや資金調達にも支障をきたしました。そのうえ、私たちのもとを離れてしまう協力会社さんも出る事態になりました。

その後、何とか危機を脱したものの、経営のすべてが外部要因に左右されてしまう体制に、大きな懸念を抱くようになりました。
私たち自身の力で生き抜く術を持てるように、様々なことを根本から見直さなくてはならない――。
そう強く考えるようになったのです。

また、KOEI入社前の私は大手メーカーの営業職に従事していました。それゆえに、「メーカー」と「工事屋」の「立場の違い」を痛いほど感じていました。「メーカー」は、確固たる「製品ブランド」を築いているためお客様から選んでもらえる。一方、「工事屋」の営業は、業界の特性上、自らできることが非常に限られていて、窮屈さと難しさを感じていたのです。

▼誕生した「配管くん」構想:専門工事会社が輝くために
「会社として強く生きるために、変わらねばならない」という想いは、2012年の社長就任時から、より差し迫った課題としてより真剣に向き合うようになりました。

実は、私は予定より5年ほど早く社長に就任しました。先代の社長である父が病に倒れ、急遽、前倒しでの社長就任が決定したのです。
その時、「社長としてどうあるべきか」、「どう経営すべきか」、そして「どう社会に対してより貢献できる会社を創っていくか」と、今までの歩みを振り返りながら、徹底的に考え抜きました。

幸い父は現在も健在ですが、「社長」となった私は「メーカー」と「工事屋」の営業の違いにフォーカスし、未来のための構想を深めていきました。
給排水や空調などを扱う私たち専門工事会社にとって、「お客様を選ぶ」ということは、構造上、非常に困難です。建設業界は、元請・下請の多重構造で成り立っており、下請けである専門工事業者は待っていることしかできません。さしずめ親鳥が運ぶ餌を待つ雛鳥のように、自ら「餌」を作ることは極めて難しいことでした。

それならば、メーカーのように確固たる「オンリーワンの製品」があれば、お客様から選ばれる立場になれるのではないか。
そうすれば、専門工事会社もそれぞれが輝ける――。

こうして、弘栄ドリームワークスにつながる構想が誕生しました。
そこで着想したのが、配管探査ロボット「配管くん」でした。

▼「配管くん」製品化までの数々の試練:一つひとつ乗り越えることで実現に近づく
いよいよ「配管くん」の製品化に向けて、動き出そうとしたところ、社内から猛反対を受けました。当時の会長であった父をはじめ、役員10人のうち私を除く9人全員から激しい反発を受けたのです。

しかし、私の意思は揺るぎませんでした。2008年に会社が苦境に立たされた時から、ずっと考え続けてきたのです。
会社のトップである以上、自分たちの強みを発揮できる価値を創出し、自らの責任で舵を取れる経営でなければならない。
ですから、周囲から反対を受けながらも、「唯一無二の価値」の必要性を信じ続け、試行錯誤を重ねる日々を過ごしました。

「工事屋のものづくり」という“非常識”な発想を理解してもらうために、結果を出し続けることにも徹底的にこだわりました。新規事業への投資は、利益を上げ続けることでしか実現できません。
私は「3分の1理論」と称して、利益の3分の1ずつをそれぞれ「投資」、「社員還元」、「会社の体力づくりのための内部留保」に分配すると公言し、毎年利益アップを実現し続けました。健全な経営状況の中で、目に見える結果が出たことで、社内の理解も深まり、投資できる規模も次第に大きくなっていきました。

製品開発に加え、組織風土の変革にも着手しました。
社員と経営陣が同じ目線で、フラットな関係性を構築できる場を作り、双方の合意のもとで会社の方針を決定するようにしたのです。さらには社員の家族にも会社を理解してもらう機会を設けるなど、「社員が主役」であり、その家族までもが主役であるような組織づくりに努めました。
「みんなで感動を共有する」ことを大切に、強い組織の基盤を固めていったのです。

一つひとつ歩みを進めるうちに、金融機関から支援をいただいたり、私たちの想いに共感した人材が入社してくれたりするようになりました。さらには大学との共同研究も始まりました。

こうした地道な積み重ねが実を結び、ものづくりの経験も実績もなかった私たちが、ようやく「配管くん」を誕生させることができたのです。
そしてKOEIの新事業だったものを切り出し、2019年に新会社「弘栄ドリームワークス」として設立しました。


「配管くん」を起点として、業界全体に「想いの芽」が広がってゆく

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▼業界の中で、弘栄ドリームワークスが果たす役割
弘栄ドリームワークスの事業は、2つの側面から価値の提供を目指しています。
一つは、配管探査ロボット「配管くん」を活用し、建築設備におけるお客様の悩みに寄り添うことです。私たちは設備の調査から問題の把握、解決策の提案、そして実際の改修工事までを一貫して行うことが可能です。

もう一つの側面は、「配管くん」を起点とした専門工事業のネットワークを築くことで、それぞれの会社が「自らの生きる道を創造する」未来を目指すことです。
一説によると、建設業界全体の96%が「専門工事業」だと言われています。現在、多くの専門工事会社は、流れてくる仕事を待つ以外の術を持たない状況にあります。しかし、業界の96%を担う私たちが、それぞれの強みを活かして光り輝くことができれば、建設業界はさらに可能性に満ちあふれた産業になるのではないでしょうか。

私たちは、株式会社KOEIを中心とした13社の専門工事業から成る「コエルグループ」として各社のシナジーを活用しています。設備工事、電気工事など、事業や地域の垣根を超えた価値向上を目指しています。

その中で、オンリーワンの新たな価値を創出し、業界全体に新たな道を照らす役割を担っているのが、弘栄ドリームワークスなのです。

▼なぜ、「工事屋」が作ったロボットが選ばれるのか?
実は、「配管くん」のような配管調査ロボットを開発しているメーカーは数多く存在します。
しかし、メーカー製品との最大の違いは、「工事屋が作ったロボット」であるという点にあります。

私どもの原点は、あくまでも「工事屋」です。
既に「配管くん」の活用を想定するお客様が目の前におり、調査データの分析技術や設備改善の提案技術、そして何より実際の施工能力を有しています。リアルな「現場」のニーズや課題に則した価値を提供できることこそが、私たちの何よりの強みになっています。
実際に、鉄道、発電所、大型ショッピングセンターなど、多岐にわたる業界のエンドユーザー様から、直接ご依頼をいただいています。

さらに直近では、インフラ維持管理の最終「駆け込み寺」として、頼っていただけることも非常に増えてきました。今まで解決できなかった課題に、私たちが応えられているという事実があります。
これこそが、現場を知り尽くした「工事屋」がロボットを作る大きな意味だと確信しています。

▼「配管くん」秘話:「誕生」と「活躍」までの険しい道のり
今では多くの引き合いをいただけるようになった「配管くん」ですが、軌道に乗るまでには多くの苦労がありました。その中には、「開発」と「営業」、それぞれに大きな転機がありました。

開発フェーズでは、立命館大学との共同研究を開始できたことが最大の転機となりました。それまでは、実現したいロボットの発想はあったものの、既存の知見とネットワークだけでは、具体的な開発手法を描ききれずにいたのです。私たちの求める知見がすべて揃っていた立命館大学との出会いは、開発の飛躍的な進展に繋がりました。

製品化された「配管くん」は、分岐や曲がり角など多様な形状の配管の奥深くまで調査できるロボットです。当初から多くのお客様に興味を持っていただいたのですが、営業フェーズにおいて大きな壁にぶつかりました。
一般的に、業界では「配管調査」を有料で行う市場がありません。調査は「無料サービス」として行い、その後の工事費用で収益を得るのが通例だったのです。

しかし、私たちはロボットを使った「配管調査」を中核とする会社です。その価値に対して、対価をいただかなくてはなりません。
当初、お客様に調査費用として予算を組んでいただくのは、非常に困難なことでした。提供する価値に自信はありましたが、それでも慣例から外れた「配管調査の予算化」への道のりは、想像以上に険しいものだったのです。

そして近年、ようやくその壁を越え、調査費用が予算化される段階に達してきました。調査から配管工事受注までの流れも確立でき、現在では大手企業から共同開発のお声がけをいただけるまでになっています。

▼設備事業者プラットフォーム構築:成功体験を業界全体の力に
弘栄ドリームワークスがここまで成長できたのは、決して私たちが「特別」だったからではありません。
様々な縁や偶然が積み重なり、地道な努力を続けた結果でしかないと、私は捉えています。もし私たちが自社の利益だけを考えていたら、ここまでは辿り着けなかったでしょう。

私たちが起点となりながらも、それぞれの「専門工事会社」に“光”が当たるような世界を創りたい。
その先をゆく“星”として、私たちが道を切り拓いていくべきだ――。

日々、そう強く信じて一歩一歩進んできたことが、今に繋がっているのだと感じています。

挑戦を始めた当初、「配管くん」構想は誰にも受け入れられませんでした。
この現在地は誰にも想像できなかったでしょうし、私でさえ夢にも思っていませんでした。
しかし、それを実現させ、独自の価値でお客様から選んでいただける会社へと生まれ変わることができました。その成果は経営だけにとどまらず、組織全体にも良い変化をもたらしました。社内のモチベーションが格段に上がったのを、肌で感じています。

長年、「専門工事業」は、仕事をもらい受けて“生かされてきた”業界です。そのため、自らを積極的に“活かす”ことが非常に不得手な傾向にあります。
だからこそ、成功体験を持つ私たちが中心となり、業界に大きなネットワークの輪を創り出す必要があります。そのうねりが大きくなるほど、専門工事会社が輝ける世界に近づいていくはずです。

2024年8月、私たちは設備事業者プラットフォーム「何とかしたいを何とかします!」を開始しました。
多彩な専門工事会社が連携することで、新たな価値と市場を生み出していく。一社では解決できない課題も、全国のパートナー同士で手を取り合えば必ず道は開けると信じています。
ここに集まった人々が、「自ら考え行動すれば、世界は変えられる」と奮起できる、そんなプラットフォームでありたいと思っています。


希望あふれる建設業界の未来へ ——想い続ければ、きっと道は開ける

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▼今後、会社で実現したいこと
これからも、私たちは「配管くん」を軸とした配管調査市場を着実に広げていきます。
前述の通り、「配管調査の予算化」は時間を要するものです。地道に取り組みを続けることで、パートナー企業、ひいては業界全体の価値向上に繋げていきたいと考えています。

そして、今後最も注力したいのは、専門工事業が「自らの生きる道を創造する」取り組みをさらに加速させることです。
その一環として、私たちは教育機関「KDWアカデミー」を立ち上げました。工事管理を担える「施工管理者」の育成を目的とし、出向先企業での講習と実務を通じて技術を習得。これにより、自社に戻ってからも受注できる案件の幅が広がり、収益力や経営基盤を強化し、会社としての本質的な価値を高めることを目指しています。

このプログラムの大きな特徴は、受講者側の企業の育成費用負担がゼロであることです。受け入れ先が費用を負担し、出向者は収入を得ながら実務を学び、技術を習得できるのです。この仕組みにより、リソースの限られた小規模な会社でも参加しやすい体系を実現しました。

さらには、「配管工」や「空調設備士」といった技術者の育成起業プログラムも始動しました。
建物やインフラ設備の更新は差し迫った社会課題ですが、建設業界は「3K」と敬遠され、人手不足が深刻です。「この産業を失くしてはいけない」と、人材育成プロジェクトを開始したところ、想定以上の応募がありました。

予想以上の反響に、私も驚いています。
世間が建設業界に魅力を感じていないのではなく、今までのアプローチが上手くいかなかっただけなのかもしれません。もっと熱意を持って、本質的な活動を続ければ、多くの未来の担い手を発掘できると希望を抱いています。

あらゆる角度からプラットフォームの輪を広げていくことが、業界の底上げに繋がると信じ、これからも革新的な挑戦を続けていきます。

▼さいごに
諸説ありますが、一般的に新規事業の成功確率は10%にも満たないと言われています。
前例のないことを成功させるのは、それほどまでに難しいことなのだと思います。

しかし、私がひたすら追い求めてきたのは「配管くん」の旗印1本だけでした。
「配管くん」を軸にした事業戦略は無数に考えられるかもしれませんが、目指してきたものはたった一つなのです。
それを実現できた今、思うことは「想いをずっと持ち続けること」は非常に重要であるということです。

社内から猛反対を受けても、資金が足りなくても、「想い」を胸に、その壁をどう乗り越えるかを必死に考え、行動するのです。
夢や価値をきちんと伝えれば、理解してくれる人は必ず現れます。資金がなければ既存事業で利益を積み上げ、技術がなければ専門家を仲間に迎え入れればいいのです。どんな障壁が立ちはだかろうとも、「想い」を抱き続け、打破する方法を模索し続ければ、必ず道は開けると、私は信じています。

そういう私自身、厳しい局面に追い込まれ、不安で眠れない夜を何度も過ごしました。
それでも、「『配管くん』は絶対に世の中に必要だ」と心の底から信じていたからこそ、この景色に辿り着けました。私にできたのですから、きっと誰もが成功の可能性を秘めているはずです。

当初は、技術も資金も何もなく、誰よりも熱い「想い」しかなかった。
そんな私を信じ、ついてきてくれた社員やすべての方々に、心から感謝しています。

とはいえ、成功と呼ぶには時期尚早、私たちの挑戦は、まだ道半ばです。
弘栄ドリームワークスは、すべての専門工事会社がそれぞれの価値を活かし、主体的に未来を創造できる社会の実現を目指して、これからも挑戦を続けていきます。

profile

氏名
船橋 吾一
役職
代表取締役会長

Introduction

企業名
株式会社弘栄ドリームワークス
所在地
山形県山形市大字風間字地蔵山下2068番地
事業内容
・配管調査サービス「配管くん」の提供
・配管メンテナンスサービス
・建設業プラットフォームの運営
・配管調査機器の受託開発
資本金
15,262万円
企業サイト
https://www.koeidreamworks.jp
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