2026-05-14

マシンピラティスを通じて、「自分を大切にしながら、やりたいことができる」が日常になる世界へ

ESS株式会社 / 代表取締役 / 坪井 里奈
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東京都

「YUZU」設立までの道のりと、影響を受けた父の背中

はじめまして。
ESS(エス)株式会社の代表取締役を務める坪井里奈です。

ESS株式会社は、“マシンピラティスを生活の一部にする”ことを目指し、パーソナルマシンピラティススタジオ「YUZU」の全国展開と、インストラクターの養成アカデミーの運営をしています。
誰でも安心して通えるアットホームな空間作りと、プロとしての本物志向を両立させたサービスが私たちの強みです。

今回は、未経験でピラティス界へ飛び込んだ私の歩みや、産後の葛藤から見つけた起業への想い、そして「YUZU」が実現したいビジョンについて、詳しくお話ししていきます。

▼Web業界を駆け抜けた20代、そして産後の葛藤
私の20代は、新卒で入社した大手デジタルサービス企業を始めとして、アパレル会社のEC担当やSNSマーケティング会社のディレクターなど、Web業界でエネルギッシュに駆け抜ける毎日でした。

大きな転機が訪れたのは、SNSマーケティング会社に在籍中、第一子を出産した時のことです。産休・育休を経て、子どもが生後7ヶ月のタイミングで職場に復帰しました。
私が担当していたのは、企業のSNS戦略立案やイベント企画・運営など行うディレクター業務。子どもが生まれるまでは、昼夜や土日を問わず働くのが当たり前の環境でした。
やりがいのある大好きな仕事でしたが、小さな赤ちゃんを育てながら、以前と同じように働くのは到底できないことでした。
悔しさと悲しさを抱えながらも、やむを得ずバックオフィス部門へ異動することになったのです。

しかし、会社の厚意にもかかわらず、その仕事は私の性分には合いませんでした。そんなある日、ふと自分の中に一つの疑問が湧き上がったのです。

「私は、ここで何をしているんだろう」

日々をただやり過ごすような感覚に、その疑問が疑念へと変わっていきました。
以前と同じ待遇で異動させてくれた会社に対し、何も成果を生み出せていない申し訳なさ。そして何よりも、保育園で頑張っている我が子に対し、「ママも仕事を頑張っているから、あなたも頑張ってね」と真っ直ぐに伝えられない今の自分を、とても情けなく感じたのです。

その瞬間、「仕事を変えよう」と決意しました。
誇りを持って真剣に仕事に打ち込む背中を、子どもに見せ続けられる親でありたいと強く思いました。

それから、セラピストの資格を取得してサロンを開業、独立の道を選んだのです。

▼人生を変えた「マシンピラティス」との出会い
独立後、サロン経営は順調でしたが、仕事や育児が多忙な中で、私自身は心身の不調が続いていました。
そんな折、お客様から「最近流行っている“マシンピラティス”を知っていますか?」と尋ねられたことが、すべての始まりでした。

お客様が知っていることを施術者として知らない訳にはいかないと、すぐに体験へ足を運びました。
そんな私を待っていたのは、これまでにない衝撃でした。

筋トレなどとは異なり、身体に無理な負担を掛けないワーク。自分の身体の動きに集中し、深い呼吸で気持ちを整えていくうちに、これまでに感じたことのない満ち足りた時間を味わいました。
数年間、不調に悩んでいた私にとって、心身を労わり、エネルギーが満たされる初めての体験だったのです。
加えて、運動が苦手で、何社ものジムを契約しては続かなかった私が、初めて「ずっと続けたい」と思えたことも驚きでした。

「同じ悩みを抱えている人たちのために、この素晴らしいマシンピラティスを広めていきたい」
この想いが私を突き動かしました。

しかし、マシンピラティス自体は素晴らしいものなのですが、当時のスタジオ環境には気になる点もありました。
大型スタジオが主流で、パーソナルレッスンもグループレッスンの傍らで行われることが多く、他の人の動きと比べてしまったり、人目が気になり集中できなかったりしたのです。また、高額なレッスン料や子連れで通う難しさも大きなハードルでした。

「それなら、もっと気軽に通えて、『マシンピラティスを生活の一部に』できるようなスタジオを自分でつくろう」
インストラクター資格も、ピラティスの経験も私にはありません。
それでも、この「想い」は誰よりも強く深い「本物」であるという自負がありました。

私のビジョンに共感してくれた5人のインストラクターと共に、都内に「パーソナルマシンピラティススタジオYUZU」の1号店をオープンしました。すると1~2カ月ほどでスタジオは満員に。私と同じように、気軽に通えるマシンピラティスを求めているお客様が、こんなにもたくさんいたのです。
それからは、お客様のご要望に一つひとつお応えするように、店舗を拡大していきました。

▼「敷かれたレール」から、父と同じ開拓者の道へ
子どもの頃の私は、明確な夢を持っていたわけではありません。
むしろ親の期待に応えようと、敷かれたレールの上を歩んでいたと思います。中学受験、進学校そして大手企業へ就職。いわゆる「エリート」と呼ばれる人生を歩むことが正解だと、自分を納得させていたのかもしれません。

私の父は、私が5歳の時に独立し、現在も設計事務所を営んでいます。かつては経営が苦しい時期もあり、家族に大変な思いをさせたくないと、子どもには「安定」を願っていたのだと思います。

当時は意識していませんでしたが、今振り返れば、必死に働く父の姿に大きく影響を受けていると感じています。ずっと父の背中を見てきたからこそ、自分が独立を決める時、無意識に父と同じ道を歩む覚悟ができていたのだと思います。

「王道の道」を願っていた父でしたが、私の起業を心から歓迎してくれました。今では仕事のアドバイスをくれる、よきビジネスの先輩でもあります。
父の背中を追って、自ら道を切り拓く「起業」という選択をして、本当によかったと感じています。


「YUZUの価値」を追求する ―徹底した理念経営と基盤構築―

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▼「YUZU」の強み:本物志向のオーダーメイドレッスン×心地よい空間
「マシンピラティスを生活の一部に」という理念を掲げスタートした「パーソナルマシンピラティススタジオYUZU」は、現在では直営・フランチャイズ合わせて約70店舗を展開するまでに成長しました。(2026年4月現在)

多くのお客様に選んでいただいている理由は、大きく2つあると考えています。
1つは、完全個室のパーソナルレッスンで、周囲の目を気にせず自分の身体とじっくり向き合えること。初心者や運動が苦手な方でも、気軽に通っていただける環境です。

もう1つは、プロとしての「本物志向」と、アットホームな「心地よさ」が両立している点です。「YUZU」のインストラクターは厳しい技術基準をクリアしたプロであるのと同時に、お客様の心と身体にそっと寄り添える人間性も兼ね備えています。

現在はスタジオ運営事業の他に、インストラクター養成アカデミーも運営しています。このアカデミー事業は、創業して1年ほどで立ち上げたものです。
当初、採用は資格保有者に限定していましたが、熱意がある方でも、資格がないだけで門前払いをしなければならない状況に疑問が湧き上がったのです。
「それなら、私たちがその熱意を形にできる養成スクールをつくり、資格取得後に『YUZU』でプロとして活躍できる道を用意しよう」
そう考えたのが、アカデミー創設の原点です。しかし、独自のオリジナル資格をつくることは、インストラクターのキャリアにとって最善ではないと考えました。そこで、同じビジョンを目指すネバダ州立大学公認「DKピラティス」と共同でアカデミーを創設したのです。

また、当初は直営店のみでしたが、「YUZU」の理念を広げるためには、自分たちの力だけでは限界に達していました。
マシンピラティスを必要とするより多くの人々、そしてインストラクターとして活躍したい方々のために「YUZU」をもっと届けたい。
この想いからフランチャイズ(FC)展開に踏み切りました。
そして、現在は70店舗を超えるネットワークへと広がっています。

▼「なぜ中心に理念があるのか」 ―理想のスタジオ実現のために―
私たちは何よりも「マシンピラティスを生活の一部に」という理念を大事にしています。
直営店では、面談や全社会議を通じて定期的に理念を共有。またFC店に対しても、デビュー研修の場などで対話を重ねながら理念の浸透を図っています。

最近では、私から発信するだけでなく、研修担当や人事、スーパーバイザーたちが日常の中で自然と「YUZUの理念」を語ってくれるようになったことに、組織の成長を実感しています。

私たちがこれほど理念を大事にしているのには、理由があります。
「YUZU」のお客様は、明確な目的がある方だけでなく、「何となく続けられる運動をしたい」という方も多くいらっしゃいます。ピラティスは海外のスターがやるような華やかなイメージがあるかもしれませんが、「YUZU」は「おうち」のような雰囲気で、誰でも気軽に来ていただける空間を目指しています。実際に、20代から70代まで、非常に幅広い方にご来店いただいています。

創業当初に思い描いた「誰でも気軽に通えるスタジオ」という理想が、今、形になっていることをありがたく感じています。
だからこそ、技術だけではなく、理念の本質を理解して、お客様一人ひとりの気持ちに寄り添える姿勢が何よりも大事なのです。

▼「YUZUクオリティ」を保つ:厳格な採用基準とボトムアップの仕組みづくり
採用においても、理念への共感を重視しています。様々なスタジオがある中、なぜ「YUZU」なのか。表面的な共感ではなく、実体験に基づいた背景があり、心から共感してくれる方と一緒に働きたいと考えています。

かつては、この基準を緩めてしまい、手痛い失敗をしたことがありました。店舗数が急増し採用が急務となった際、一時的に「技術スペック」さえあればいいという、数ありきの採用に走ってしまったのです。
しかし、結果は散々なものでした。その時期に採用した方たちは、理念に反する行動を取ることが重なり、結果的に早期に離職していきました。

この失敗を経て、改めて「理念への共感」の大切さを痛感しました。この理念が中心にあるからこそ、「本物志向×アットホームな心地よさ」という“YUZUの価値”を提供できるのだと身を持って感じたのです。
それ以降は、採用基準を徹底し、人材の見極めを強化しています。

このクオリティを担保し続けるために、現場の声を取り入れながら、マニュアルやルールなど、仕組みづくりにも力を入れてきました。直営・FC問わず、大事にしている価値観や行動基準を仕組みに落とし込み、組織全体で一定の質を維持できる体制を構築しています。技術面においても、デビュー前研修やフォローアップ研修を通じて、高い技術レベルの維持に努めています。

ありがたいことに、ご紹介で通い始める方も増えています。娘さんがお母様を誘ってくださったり、パートナーを連れてきてくださったりと、自然と人がつながるアットホームなスタジオになっていることを、とても嬉しく思います。

▼2度の挫折を乗り越えて、新たなステージへ
素敵な仲間やお客様に恵まれ、今の「YUZU」があることにとても感謝しています。
私が常にエネルギッシュに組織を牽引してきたように思われるかもしれませんが、実は挫折と言えるほど辛い時期が二度ありました。

1つ目は、スタジオ運営を始めて2年ほど経った頃のことでした。当時は、インストラクターは全員が業務委託。経営も順調で、彼女たちも働く環境に満足している様子でした。私も密にコミュニケーションを取り、信頼を寄せていました。

ところが、インストラクターがお客様を引き抜いて独立するという出来事が続いたのです。よかれと思い対話してきただけにショックは大きく、未熟だった私は裏切られたような気持ちで怒りさえ感じていました。

しかし、冷静になり気づいたのは、自分の至らなさでした。
私がもっと彼女たちの話を聞いて、「YUZUで独立」という道をつくってあげられていたら、違う結果になっていたのかもしれません。
この辛い経験があったため、現在はインストラクターの独立支援制度を用意しています。痛い経験でしたが、今となっては気づきをくれた機会に感謝しています。

2つ目は比較的最近のことです。組織が順調に拡大する中で、自分への信頼が大きく揺らいでしまったのです。
私はインストラクターではありません。ですから、資格を持っているスタジオ経営者に対し、どこか劣等感のようなものを感じていました。
代行レッスンに入ることもできず、技術的なアドバイスもしてあげられない。「YUZU」の仲間と深く関われば関わるほど、みんなの気持ちを100%理解してあげられない自分にもどかしさを感じ、苦しさが募っていったのです。

一方で、インストラクターではない私のもとへ、なぜ多くの人が集まってくれるのか疑問に思いました。彼女たちに話を聞きに行き、「インストラクターであることが必ずしも“正”ではない」と気づかされました。
それよりも私は、揺るぎない「理念」を伝え続け、「YUZUの価値」を守り広めていくという、私にしかできない役割を全うすることが重要だと分かったのです。

その瞬間に、肩の荷が下りたような感覚を覚えました。
起業して以来、子どもにも、メンバーにも、「リーダーとして“強く立派な背中”を見せなければならない」と、自分一人で背負い過ぎていたのかもしれません。しかし、一人で成し遂げたのではありません。ここまで歩んでこられたのは、想いに共感して集まってくれたメンバーと支え合い成長してきたからです。

そう気づいてからは、技術的なことはメンバーに任せ、私は組織を強くするために自分にしかできない役割があると自信を取り戻すことができました。
そのためにも経営者として、理念を軸とした経営について、一層学びを深めていきます。今では、自分の強さも弱さもさらけ出して、みんなで切磋琢磨しながら進んでいきたい、と思うようになりました。

私が会社の舵を切り、みんなで道を切り拓き成長していく。
関わるすべての人が活き活きと輝ける場所へと、「YUZU」はさらに飛躍していきます。


どんなライフステージでも、自分らしく輝ける場所へ

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▼今後、会社で実現したいこと
本質的なマシンピラティスをさらに世の中に広めていくため、展開エリアを拡大していきたいと考えています。
それと同時に、最も力を入れたいのが、インストラクターのキャリアパスのさらなる拡充です。

現在も、独立支援制度や、育成担当、マネージャーといった多様なポジションを用意していますが、さらにその先も見据えています。独立したいけれど一歩が踏み出せない方へのサポート体制の構築や、独立以外の選択肢も提示していきたいと考えています。
今もキャリアパスはそれなりに豊富な方だとは思いますが、一人ひとりがずっと活躍できる環境や選択肢をもっと充実させていきたいのです。

これは、私がライフステージの変化により、大好きだった仕事を諦めざるを得なかった経験が大きく影響しています。結果として、今の「YUZU」設立につながりましたが、当時の悔しさや困難は並大抵のものではありませんでした。
幼い子どもを抱え、十分な計画もないまま独立の道を選んだため、非常に苦しい時期を1~2年過ごしました。その経験から学んだことも多いですが、一方で「経験する必要のなかった苦労」もあったと感じています。

だからこそ、一人ひとりのインストラクターが自分の人生や家族を大切にしながら、やりたい仕事を続けられる仕組みを強化していきたいのです。

この仕組みづくりに最も注力するのは、それが最終的にお客様の満足につながっているからでもあります。現場の彼女たちが幸せでなければ、お客様へ最善のサービスを届けることはできません。経営者として、メンバーが幸せに輝ける環境を整えることこそが、私の最も重要な役目だと考えています。

▼さいごに
家族、「YUZU」メンバー、多くの方々が、私を支え、応援してくれています。そのすべてに心から感謝しており、それが私自身のエネルギーの源泉にもなっています。

ライフステージが変化していく中で、やむを得ず「何かを諦めなければならない」瞬間が、誰しもあると思います。
それをすべて「絶対に諦めてはいけない」と断言するのは、理想論でしかないと思います。何が“正しい道”かなど、誰にも分からないのではないでしょうか。

しかし、最終的に決断するのは自分自身です。
「仕事を離れ、子どもとの時間を優先する」
「子どもに誇れる仕事で輝く」
どんな決断であったとしても、自分が納得して選んだ道であれば、それは間違いなく“いい決断”なのだと私は信じています。
そうであれば、どんな時でも前を向いて歩いていけるはずです。

私自身、現在も7歳と0歳の子育て真っ最中です。私が父の背中を見て何かを感じたように、我が子たちもいつか、「YUZU」で頑張る私を見て何かを感じる日が来るかもしれません。
その日を心待ちに、今は力を尽くしていきます。

「マシンピラティスを生活の一部に」
どんなライフステージにいても、誰もが心と身体を整えられる日常を目指して——。
この理念を実現するため、「YUZU」チーム一丸となって、その未来をつくっていきます。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。


profile

氏名
坪井 里奈
役職
代表取締役

Introduction

企業名
ESS株式会社
所在地
東京都品川区東五反田1丁目10番10号
事業内容
・パーソナルマシンピラティススタジオYUZUの運営
・ピラティスインストラクター養成スクールの運営
企業サイト
https://yuzu-pilates.com/
Instagram
https://www.instagram.com/yuzu_pilates
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