2026-03-11

IT起業家から家業承継へ。「クリーニング×IT」の融合でアップデートし続ける新たな価値

株式会社ヨシハラシステムズ / 吉原
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TopVoice

滋賀県

IT業界の最前線から、家業であるクリーニングの世界へ

はじめまして。
株式会社ヨシハラシステムズの代表取締役を務める吉原保です。

ヨシハラシステムズは、滋賀県を拠点に長くクリーニング業を営んできた歴史ある家業を母体としている企業です。培ってきた技術と品質へのこだわりを大切にしながら、時代の変化に合わせて事業を進化させ、現在はクリーニングとITを融合させたネット宅配クリーニング「せんたく便」を主力事業として展開しております。

今回は、私がどのような想いで家業を継ぎ、苦難を乗り越えて事業を成長させてきたのか。その軌跡と、未来を見据えた展望についてお話しさせていただきます。

▼父との軋轢、そして自ら切り拓いたIT起業家への道
私の実家は、滋賀県で父が創業したクリーニング業を営んでいました。「いつかは家業を継ぐ」という意識は頭の片隅にありましたが、それとは別に、私は幼い頃からコンピューターなどのITテクノロジーに強い関心を持つ少年でもありました。

やがて学生生活を終え、私のキャリアは大手メーカーである京セラからスタートしました。数年勤務した後、一度は父の会社に入り、様々なことを任せてもらいました。しかし、若かったこともあり代表である父と折り合いがつかず、時にはぶつかることもありました。加えて、自分の中でITへの情熱が日に日に大きくなっていたことも重なり、このタイミングで一度家業を離れ、自らの道を進む決断をしたのです。

▼インターネット全盛期を駆け抜けた成功と、立ちはだかった巨大な壁
当時はWindows95が発売された時期で、私自身もインターネットという未知の可能性に大きな魅力を感じていました。そして25歳で父の会社を出た後、単身で起業しました。

独学で勉強を重ね、ホームページ制作などを手掛けていました。当時は「インターネット黎明期」にあたり、昨今とは異なり、ホームページ制作会社がほとんど存在しない時代でした。そもそも世の中が「インターネット」の価値を十分に理解していなかったので、自分でゼロからサービスを設計し、ニーズそのものをつくることにも注力しました。
手軽にブログを作成・発信できるプラットフォームや、レンタル掲示板、ホームページのレンタルサービスなど多岐にわたるサービスをリリースしました。家にも帰らずがむしゃらに働きましたが、毎日が充実し、手応えを感じていたのを覚えています。

その後、NTTドコモの「iモード」誕生を機に、モバイル向けコンテンツ制作にシフトしていくようになりました。当時はまだWeb広告による収益モデルが主流ではなく、モバイル向けコンテンツの方がマネタイズしやすい環境でした。
ちょうどITバブルの最中で、新しいコンテンツをリリースするたびにユーザーが増え、それに伴い会社も成長していきました。
当時はガラケーが毎年のように進化し、新しい機能が次々と追加された時代。「iモード」のコンテンツ制作を始めた当初は、簡単なHTML表示対応だけだったのが、カメラが搭載され、ゲームができるようになり、急激な進化を遂げていきました。私たちはその進化のスピードに食らいつき、常に最新コンテンツを生み出すことに必死でした。

起業から約10年、会社は従業員150名、年商10数億円規模にまで成長していました。ここまで全力で走り続けてきましたが、私自身はどこかに限界を感じ始めていたのです。

決定的だったのが、「iPhone」の登場です。
今までとは比べ物にならない革新的な技術、まったくの新規プレイヤーの参入――。
ライバル会社のサービスが“時代遅れ”になり、衰退していく様子を目の当たりにしました。
難局を打開するために様々なアイデアを検討しましたが、その技術は業界を一変させるくらいの凄まじいもので、今までの勝ち筋が通用しないことは明らかでした。行きついたのは、このまま闘い続けても乗り越えるのは難しいという結論でした。
そして、最悪の事態を避け従業員の将来を守るため、私は会社を売却するという苦渋の決断を下したのです。

▼予想外の父の逝去、家業を「継ぐ」という決断
会社を売却し、代表を退任した私は35歳になっていました。
「次はどんな道を歩もうか」と思案していた矢先、病院で療養中だった父が急逝したのです。亡くなる直前、父は正月に一日だけ帰宅しました。家族で食卓を囲んだ際も、普通に食事を摂っていたので、その時は父が亡くなるとは夢にも思っていませんでした。

以前から、いつか「その時は来る」と覚悟はしていましたが、どこか遠い先のことだと感じていました。
将来的には私が会社を継ぐことも考えていましたが、こんなに早急に訪れるとはまったく想像していませんでした。

しかしそれが現実となった時、私は「会社を継ぐ」ことに迷いはありませんでした。自分が当然果たすべき責務だと感じたのです。こうして2008年、私は父の跡を継ぎ、現在のヨシハラシステムズの代表取締役に就任したのです。


マイナスからの出発。クリーニング×ITから誕生した「せんたく便」

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▼会社に残された多くの課題と、ITとの融合が生んだブレイクスルー
引き継いだ当初は、特に大きな憂慮はしていませんでした。これまで会社経営に携わってきた自負もありましたし、かつて父と共に働いた経験から、社内の状況はある程度理解しているつもりでした。しかし、いざ代表として引き継いでみると、想像以上に深刻な課題が山積みだったのです。

最前線の現場はベテランのパートさんが支えてくれていたものの、組織の“核”となる人材が不在でした。また、父が体調を崩してから売上が低迷し、一時的に資金繰りにも苦労するなど、まさに「マイナスからのスタート」でした。

まずは事業基盤を固めるため、売上の拡大に注力しました。
しかし、多額の投資ができる資金も当然ありません。そこで私はこれまで培ってきた「ITの力」を掛け合わせて売上の拡充を模索したのです。

単にWeb広告で実店舗への来客数を増やすだけでは、伸び幅に限界があると考えました。
IT業界時代から、壁が立ちはだかってもゼロから仕組みを考え、形にして乗り越えることが、私の中で当たり前の習慣でした。そのため、クリーニング業界でも「新しいサービス」を生み出すことがごく自然な発想だと思われたのです。

そこで辿り着いたアイデアが、実店舗を増やさずに全国から注文を受けられる、ネット完結型の宅配クリーニングサービス「せんたく便」でした。当時、このようなモデルは前例もなく、「実現不可能」と言われていました。
私はすぐさまサービス設計を行って企画書を完成させ、全国展開の実現のためにヤマト運輸へ提案に向かいました。今までにない新しいサービスの可能性を信じていただけたのか、パートナーシップを組むことが決まり、サービス実現の道筋ができたのです。

そして2009年1月、全国でも先駆けとなるネット宅配クリーニング「せんたく便」をローンチしました。
開始直後から全国のお客様から注文が入り、確かな手応えを感じました。もちろん広告などの投資は行いましたが、それを上回る反響があり、リピート率も好調でした。そして、「せんたく便」の成功とともに会社の業績も順調に伸びていったのです。

▼シンプルさと利便性を追求したサービス「せんたく便」
「せんたく便」を立ち上げる際に、最も頭を悩ませたのが、注文の仕組みや料金体系の設計でした。試行錯誤の末に行き着いたのが、「お客様にとっての分かりやすさ」を重視した「10点パック」です。これは専用の段ボールに10点までなら、コートでもワイシャツでも、何を入れても一律料金。このシンプルさが多くのお客様に受け入れられました。

その後も、お客様の声に耳を傾けながらサービスを拡充していきました。
少量の「5点パック」やまとめ出しに便利な「15点パック」といったバリエーションの強化に加え、シーズンオフの衣類をそのままお預かりする「保管サービス」、さらには布団クリーニングなど、お客様の要望に一つひとつ応えていくことで、サービスの幅を広げてきました。

サービス開始から15年以上が経ちましたが、当時から継続して利用いただいている方も多く、長年のご愛顧に心より感謝しています。また、有名比較サイトの宅配クリーニング部門でも高評価をいただくなど、多くの方に支持していただいています。

順調に成長を続けている当社でしたが、すべてが順風満帆だった訳ではありません。
組織拡大のためにM&Aを行った際に、今までにない大きな壁にぶつかりました。異なる文化を持つ組織の人材育成や、不採算店舗の立て直しには想像以上の労力を要し、苦境に立たされました。そしてその統合と整理に多くの時間と労力を費やし、ようやく会社を成長軌道へと戻すことができたのです。
しかし、その苦しい経験があったからこそ、現在はより緻密な戦略を持って未来の成長へと地図を描くことができています。

▼強固な組織へ:体制構築と守り続けるべき根幹
会社が成長していくのと同時に、私は組織づくりにも本格的に着手していきました。
父から会社を引き継いだ当初は、会社の中枢を担う社員がおらず、店舗マネジメントやスタッフ教育、さらには工場の統括まで、すべてを私が抱えている状態でした。
そこで新たに事業部制を導入し、店舗部門の事業部長や工場長といった管理職を採用し、現場のマネジメントを一任できる体制を構築したのです。こうして組織の基盤が整ったことで、私は次なる「成長戦略」を練るという、経営本来の仕事に集中できるようになりました。近年も事業拡大を見据え、さらなる体制強化を行っています。

私が採用において最も重視しているのは、「素直さ」と「誠実さ」です。
もちろん経験やスキルも大切ですが、仕事に対しても人に対しても、素直な心で誠実に向き合える人と一緒に会社を成長させていきたいと考えています。
現在、社内では新卒から40代、50代と幅広い世代が活躍しています。また現場を支えるパートさんたちは、私が代表に就任する前から会社を支えてくれている方も多く、非常にありがたく感じています。彼女たちの挙げてくれる現場の改善案には、サービス向上のための貴重なヒントが溢れており、できるだけそうした現場の声や要望に応えるよう努めています。

そして、会社の方針として、「約束を守る」ことを根幹に置いています。
1. 納期の厳守
2. クリーニングの品質向上
3. 接客の品質向上
この3つの品質を守り抜くことが、お客様との信頼に繋がり、ひいては会社の未来を創ると信じています。


確固たる「軸」を基点に、世界を広げていく

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▼今後、会社で実現したいこと
現在のクリーニング業界を取り巻く環境は、決して楽観視できる状況ではありません。
少子高齢化による人口減少に加え、衣料品の低価格化やオフィスカジュアルの普及によって、スーツやワイシャツなどのクリーニング需要は年々減少しています。さらに今後は団塊ジュニア世代の定年退職期を迎え、急激な需要縮小が予想されています。

一方で、コインランドリー市場は拡大しており、「洗濯」というカテゴリー全体を捉えれば、現時点で市場自体が縮小している訳ではありません。しかし、未来を見据えた際には、さらに視点を転換し新たな戦略を描いていかなければならないと考えています。

そこで私が計画しているのは、「洗濯」というマーケットからさらに視点を広げ、リユース市場へと事業を拡大することです。
大手フリマアプリや総合リユースショップの飛躍に見られるように、近年リユース市場は急速に拡大し、今後も成長が見込まれています。私はその中でも特に「古着」に着目しました。当社の培ってきた「クリーニング」という強みを掛け合わせることにより、独自性のあるサービスを展開することを構想しています。

もちろん、今後も主力サービスである「せんたく便」の拡大と拡充もさらに進めていきます。
これからも実績と信頼を積み重ねながら、お客様のより幅広いライフシーンを支えられる企業を目指して邁進してまいります。


▼さいごに
世の中には、私と同じようにご家族から事業を引き継ぎ、二代目、三代目として会社のために日々奮闘されている方も多いのではないでしょうか。
私自身は、父の生前に共に働いた時期もありましたが、お互いに“家族”という近すぎる関係ゆえに別の感情が入り混じり、折り合いがつかなくなって、一度は別の道を選びました。

しかし、父が亡くなった後、予想外のタイミングだったにも関わらず、私は迷うことなく「会社を継ぐ」と決断しました。
父が創業し、時代に合わせてスタイルを変えながら成長していく様子を幼少期から間近で見てきました。父が残してくれた会社を「絶対に潰したくない」と心の底から思ったのです。
社名は現在の「ヨシハラシステムズ」に変更しましたが、「ヨシハラ」の名前はそのまま記しています。自分でも明確な理由は分かりませんが、どこかに父が築いた“証”のようなものを残しておきたかったのかもしれません。

私が会社を引き継いでから、父が築き上げたものを大切にしながらも、サービスの形も組織体制も当初とはまったく異なる会社へと生まれ変わりました。そうでなければ、会社を存続し成長させることは難しかったと思います。
今振り返って、数々の困難を乗り越え、ここまで辿り着けたのは、私自身が「確固たる覚悟」で経営に臨み続けたからだと確信しています。最終決断を下し、結果に全責任を持つのは、誰でもない自分自身です。どんなに困難な局面に立たされようと、決して逃げることも先送りすることも許されません。

私は父の逝去により、否応なしにそのような環境に置かれたので、覚悟を決め行動するしかありませんでしたが、そうした状況にない経営者の方であれば、自らを意識的に追い込む必要があるのではないかと考えています。
特に親御さんが、会長や相談役として現在も会社に関わっている場合、「すべてを負う」という責任の重さが、無意識のうちに曖昧になってしまうこともあるのではないでしょうか。

決断も失敗も、すべてを自分自身の責任として引き受ける紛れもない「経営者」である――。
その覚悟を決めることこそが、会社を真の成長へ導く始まりなのだと信じています。

そして私自身、現在も新たなる挑戦の渦中にいます。
ヨシハラシステムズは、先代が築いた基盤を活かしながら、新しい価値を生み出し続け、お客様に選ばれ続ける企業を目指して、さらなる企業成長の実現に向けて歩んでまいります

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

profile

氏名
吉原
役職
代表取締役

Introduction

企業名
株式会社ヨシハラシステムズ
所在地
滋賀県彦根市大堀町380番地1
事業内容
当社は、テクノロジーと現場力を融合し、業務効率化と顧客価値の最大化を実現するソリューション企業です。

自社で培ったクリーニング・物流・運用ノウハウを基盤に、業務支援システム、宅配クリーニング運営・開発を行い、更にAPI連携プラットフォームの開発・運用を行っています。
現場に根ざした実践的なDXを強みとし、デジタルとリアルを統合したサービスで業界の変革を目指しています。

「感動を創り出し、世界を変える企業」を理念に、全国、そして世界へと持続的な成長を続けています。
資本金
1,373万円
企業サイト
https://www.yoshihara-cl.co.jp/
Facebook
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Instagram
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Youtube
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