2025-12-17

ビッグデータが価値に変わる「仕掛け」をつくる 【Agoopが描く共創のビジョン】

株式会社Agoop / 加藤 有祐
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TopVoice

東京都

ITへの情熱が導いた、創業からCEO就任までの歩み

はじめまして。
株式会社Agoopの代表取締役社長 兼 CEOを務める加藤有祐です。

Agoop(アグープ)は、ソフトバンクグループの一員として、位置情報ビッグデータを活用する先進的企業です。ユーザーの同意を得たスマートフォンアプリから位置情報 ・センサー情報を集積し、独自の技術で解析することで人の動きを見える化し、「流動人口データ」などのビジネスに新しい視点をもたらす価値ある情報を提供しています。


▼IT技術への興味がスタートの原点
私は1982年生まれで、幼少の頃から、当時でいうワープロやパソコンといったIT技術に興味を持っていました。小学校時代は、毎日ワープロでタイピング練習をしているような子どもでした。今思えば、この頃からテクノロジーに対する強い関心があったのだと感じています。

一転して、大学時代は「土木工学」を専攻しました。何か「地図に残る仕事がしたい」との思いから選んだ専攻でした。
結局、大学4年やその後進学した大学院では、プログラミングを駆使する数値コンピューティングの研究室に入り、大学後半の期間は毎日プログラムを組む生活を送っていました。土木工学を専攻したにも関わらず、私の心の根底には、ITテクノロジーに対するマインドがずっとあったのかもしれません。

▼孫正義社長に魅了され、決めた就職先
やがて就職活動の時期がやってきました。土木専攻の進路としては、建設コンサルタント企業や大手建設会社への就職が典型的なものでした。

私は偶然にも、ソフトバンクの孫正義社長(当時)が新卒向けに行うプレゼンテーション、当時「孫正義ライブ」と呼ばれていたイベントに参加しました。そこで孫さんの考え方に触れ、衝撃を受け、強く心を揺さぶられたのです。
「ITで社会を変えていく」、「ソフトバンクグループが提供したサービスによって、地球の裏側にいる誰かを笑顔にする」といったスケールの大きな思想に感銘を受け、ソフトバンクへの入社を、その場で決意しました。
そして2007年にソフトバンクBB株式会社(当時)に入社したのです。

入社後はプログラマーとして、ブラウザ上でさまざまなデータを地図上に可視化するGIS(地理情報システム)内製開発チームに所属し、経験を積み上げていきました。

▼Agoop創業、ネットワーク品質改善から人流データ事業へ
転機になったのは、iPhoneの登場です。
2007年、2008年頃からスマートデバイスが普及し始め、ガラパゴス携帯から画面が大きくなり、今のスマホに近い端末が徐々に広まっていった時代でした。
私はこのプロダクトに大いに感動して、スマホの時代がくると確信しました。それから、モバイルアプリ開発の勉強をして、アプリエンジニアに転身しました。

そして、社内でiPhoneのアプリ開発チームを立ち上げ、自分自身もそのチームに合流しました。実はこれが現在のAgoopの誕生につながっています。
アプリ開発を進める中で、人々の行動や場所など、さまざまなデータを収集できることに気が付きました。ここから、スマホアプリを介したデータ収集・活用の着想を得たのです。

ソフトバンクからiPhoneが発売されて約1年後の2009年、創業メンバーの一員として株式会社Agoop立ち上げに参画しました。
社内ベンチャー企業として、ソフトバンクグループのネットワーク品質改善のために、スマホからデータを集める仕組みをつくったのがスタートラインです。日本中の電波状況が悪い場所をユーザーから自動的に集め、可視化するシステムを開発したことで、ネットワークの改善に大いに貢献しました。
これがAgoopにおけるビッグデータ事業の起点となりました。

こうして、ネットワーク改善のための大量の位置情報データを扱う中で、「これが人の動き、行動データそのものだ」という洞察を得て、Agoopの事業は現在の「人流データサービス」へと昇華していったのです。

2009年のAgoop設立から、創業メンバーとして立ち上げに携わり、以来15年間在籍し続けています。 それまでは取締役 兼 CTOとして技術面を牽引してきましたが、2024年に代表取締役社長 兼 CEOに就任しました。


ビッグデータ、その先にある「幸せ」を創出する

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▼早すぎた“先駆者”とコロナ禍の転機
Agoopの事業は、前述のように、ソフトバンクグループのネットワーク品質可視化の仕組みを構築し、2014年、2015年頃から徐々に人流データ事業へとウエイトが変わり、現在では当社のコア事業へと発展しました。

Agoopが位置情報ビッグデータを取り扱い始めたのは、非常に早い時期でした。
当時は大多数の企業がクラウドすら使っていないような時代でしたが、当社は既にクラウドでデータを分析できる環境をつくり上げていました。「人流データ」というような言葉もなかった時代でしたので、そうした意味で、当社はこの分野の先駆者と言えるでしょう。

しかし、時代的に早すぎて、データの必要性が理解されにくく、そもそもデータを扱える技術者も少ないという苦境の中でのチャレンジでした。
また、「ビッグデータ」や「位置情報データ」に関する社会からの信頼感も薄く、統計データ加工や秘匿化処理を行い、プライバシー保護対策は万全であるにも関わらず、“位置情報”という言葉だけで「プライバシーを侵害する会社」などと非難されることもありました。
私たちが感じている可能性の大きさとは裏腹に、人流データ事業が期待通りにいかない時代がしばらく続いたのです。

大きな転機となったのが、新型コロナウイルス感染症拡大期でした。
テレビなどのさまざまなメディアや政府機関でも、Agoopの人流データが活用され、感染症対策に役立てられました。これをきっかけに、人流データは「生活の中で役に立つデータ」と多くの人々にポジティブに受け入れられるようになり、人流データに対するさまざまな企業や社会の関心が高まっていったのです。データに価値を見出す人々が増えていき、明らかに時流が変わったのを実感しました。

▼圧倒的に使いやすく、自律的に課題解決を推進できるサービス
Agoopは、3つの事業を展開しています。

一つ目が、スマートフォンアプリから取得した位置情報を解析し、「人流データ」などビジネスや社会に価値をもたらす情報を提供する位置情報ビッグデータサービス事業です。これは当社のコア事業となっています。
二つ目が、ソフトバンクグループのネットワーク品質改善を支えるモバイルネットワーク解析事業、そして三つ目が、自社アプリの企画・開発も行うコンシューマ向けアプリ開発事業です。

当社の強みは、大きく2つあります。
一つはサービス自体が非常に優れている点です。データ品質がいいのは当然ですが、最も重視しているのは圧倒的に使いやすいUIデザインと開発スピードの速さです。徹底したカスタマーファーストで、誰もが使いやすく、求める機能を迅速に追加しながら、お客様が新たな価値を生み出せるサービスの実現を目指しています。

もう一つは、お客様への伴走支援です。
私たちが提供するのは、データやツールそのものではなく、お客様自身がそれを有効活用し、課題解決につながるまでのサポートや研修を通じた人材育成支援です。この伴走支援がお客様からの高い評価につながっていると感じています。

中でも、当社のサービス「マチレポ」、「コンプレノ」は、多数のお客様にご活用いただいております。
「マチレポ」は、お客様が指定する店舗や施設、観光地などへの来訪者数や、属性・ペルソナ別の内訳などを分析できる人流マーケティングツールです。
一方、「コンプレノ」は指定した施設や観光地などへの人の流れや、市区町村内での人の動きを動画で分析できる人流可視化分析ツールで、2025年カムチャツカ半島沖地震の津波避難警報発令時の避難渋滞状況の可視化にも活用されました。

直近では、自治体のお客様の活用も増加しています。
人流データは自治体業務のさまざまな分野で活用できるので、イベントや観光分析・対策、都市計画や交通渋滞分析、防災危機管理など全庁を横断して多岐にわたる用途でご活用いただく機会が増えています。

私たちは、データ活用そのものを目的とするのではなく、自治体の皆様がEBPM(エビデンスに基づく政策立案)を通じて、仮説検証を重ね、よりよい行政・まちづくりを迅速に進めていくことが重要だと考えています。
それゆえ上記2つのツールも、使用するための知識や技術は必要なく、直感的にご利用いただくことが可能です。さらに、私たちはこれらのツールと組み合わせて、EBPMと生成AIを掛け合わせた研修も実施しています。これらを一緒に活用することで、自治体の皆様は EBPM を含めた業務にすぐに応用できるようになるのです。

ツールはあくまでお客様の目的達成のサポートであり、現場でデータを活用できる人材の育成を主眼においた伴走支援が、私たちのモットーです。

その他にも、民間小売業のお客様による活用も増加しています。
出店計画はこれまで、経験と勘、地道な現地調査に頼っていましたが、当社のサービスを使えば、出店候補地にどんな年代の人がいつ来ているかといった情報を、現地に行かずにブラウザ上で確認できます。非常に効率的だとご好評で、株式会社ワークマン様や俺の株式会社様などにもご活用いただいています。

さらに、さまざまな業種のお客様にもご活用いただき、売上予測などのAI活用も進んでいます。ユーザーにとってもニーズがある店舗が出店されるので、広く社会に恩恵をもたらすものと確信しています。

▼Agoopが目指す組織と、実現したいビジョン
私がCEOに就任して以来、特に注力してきたことが2つあります。

一つは、Agoopが大事にしている「共創組織・共創社会」という理念を、より徹底して浸透させることです。
部署が異なっても、たとえ競合企業であったとしても、お客様や社会のためになるのであれば、「部署を超えて、会社を超えて共創をしましょう」、というメッセージをより明確に打ち出しました。
私がCEOになってから、それまでは関わりが少なかった企業とも、積極的に情報交換や交流を進めています。そして、業界全体でサービスがさらに向上することを目指しています。

もう一つは、社内メンバーとの距離を縮め、情報の透明性を重視することです。
当社には約50名の社員がいますが、メンバーも経営層も、フラットな関係性で「オール社員」として、それぞれの考えや、メンバーが抱える問題などを、積極的に情報交換を重ね、風通しのよい組織づくりに励んできました。社員が働きやすい環境をつくるのが、経営の最大のミッションだと考えています。社員一人ひとりの考えや想いを尊重しながら、部署や役職関係なく意見を交わし合い、会社全体がワンチームとしてベストな選択ができる組織を目指しています。

そして、これらの取り組みは、メンバーが現場で得た顧客の声や市場の変化を、鮮度の高い情報として全社で共有し、部署を超えたお客様サポートの実現にも繋がると確信しています。

こうした組織と体制の目指す先に、当社のビジョン「社会や人々を幸せにする『仕掛け』を作る - Big Data as a Value -」があります。
現在では、ビッグデータは社会から“何か凄いもの”というイメージを持たれることが多いですが、使う人にとって価値にならない限りは単なる”ゴミ“に過ぎません。
だからこそ、私たちはビッグデータを「価値」ある形で届け、そのデータが社会の課題を一歩でも前進させ、人々の幸せにつながるような「仕掛け」づくりまで取り組むことに力を尽くしているのです。


「確度の高い意思決定」をスタンダードとする社会へ

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▼今後、会社で実現したいこと
ありがたいことに、自治体や民間企業のお客様による、当社のサービスの活用は着実に加速しています。こうした既存サービスの拡大はもちろんですが、今後の“カギ”となるのはAIとの共存強化だと考えています。

現在もAIを活用した機能は提供しているのですが、さらに強化されたAIサポートで、ユーザーがサービスを手に取った瞬間から、やりたいことを実現できるような世界を目指しています。
ユーザーの知識やリテラシーに一切依存することなく、AIと対話しながらデータを活用した意思決定や仮説検証を当たり前のように実現できる社会 ――。それをこの2、3年で築いていきたいのです。

私たちが目指すのは「正解を求める」ことではありません。そうではなく、今ある最良のデータを使って仮説検証のスピードを上げ、意思決定の確度を高めていくことが重要です。

日本について、悲観シナリオが語られることも多いですが、現状課題を正確に把握できなければ、その先の議論も意味を成しません。残念ながら、今の日本は、データという共通言語を用い、皆が同じ価値観で課題把握ができているという状況は、未だに少ないのが現状です。

だからこそ、社会課題の“見えない”をデータで見える化して、共通認識を持つことで、初めて未来のための建設的な議論を行うスタートラインに立てるのではないでしょうか。
私たちは、誰でも使えるサービスを提供し、誰もが当たり前に、共通言語で課題を語りあえる社会の実現を目指しています。

▼さいごに
私のモチベーションの源泉は、大きく分けて2つあります。

一つは、孫さんに憧れてソフトバンクグループに入社した時から変わらない「テクノロジーの力で社会課題を解決したい」という根底にある強いエネルギーです。

そしてもう一つの大きな源泉となっているのが社員たちです。
当社のメンバーは、本当に前向きで、常にお客様のために一丸となって尽力してくれているのです。一人ひとりのメンバーを心から尊敬しており、かけがえのない存在です。その社員たちの頑張りや想いが、すべて私の大きなエネルギーとなっています。また家族にもいつも支えてもらっており、周囲の方々に恵まれていると心から感謝しています。

新卒でソフトバンクBB(当時)に入社して17年間、本当に密度の濃い経験を積ませていただきました。
私の年齢的にもちょうど人生の折り返し地点に差し掛かる時期でもあります。
そして、さらにこれからCEOとして、新しく大きな挑戦の山を乗り越えて行く所存です。

データ活用・分析により、経験と勘ではなく、根拠と自信に基づいた意思決定を促し、失敗と改善のサイクルを回し続けられる社会の早期実現を目指してまいります。
そのためにも、私たちAgoopの取り組みを幅広く、さまざまな方々に届け、事業を大きく成長させ、ビッグデータの活用を通じて、社会課題を解決することに貢献し続けていくのです。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。


profile

氏名
加藤 有祐
役職
代表取締役社長 兼 CEO

Introduction

企業名
株式会社Agoop
所在地
東京都渋谷区神宮前3丁目35番8号ハニービル青山
事業内容
ソフトバンクグループの一員として、位置情報ビッグデータを活用する先進的企業。
ユーザーの同意を得たスマートフォンアプリから位置情報 ・センサー情報を集積し、独自の技術で解析することで人の動きを見える化し、「流動人口データ」などのビジネスに新しい視点をもたらす価値ある情報を提供しています。
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