2025-09-10

“弁護士”の価値を超えて、未来を切り拓くパートナー

インテアス法律事務所 / 樽本
インタビュー画像

TopVoice

東京都

弁護士「樽本哲」の誕生と独立までの道のり

はじめまして。
インテアス法律事務所の代表弁護士を務める樽本 哲です。

当事務所は、経営者のビジネスと人生に徹底的に寄り添い、企業法務から事業承継、M&A、そして社会課題に取り組む非営利組織の支援まで幅広く手がけております。
法的支援にとどまらない多面的な価値提供を通じて、経営者が真の力を発揮できるよう、エンパワーメントを目指しています。

▼弁護士を目指し上京
私の出身は和歌山で、父は転勤族、母はナースという家庭環境の中で育ちました。
弁護士を志した動機は崇高なものではなく、「手に職をつければ、どこでも生きていける」という母の言葉が漠然と頭にあったからです。高校生の頃、早稲田大学の法学部に推薦で進学できることが決まり、「それなら司法試験でも目指してみよう」と、軽い気持ちで進路を決めたのが始まりでした。

もっとも、上京の裏には別の動機もありました。
意外に思われるかもしれませんが、実は東京に出て、ストリートダンスをやりたかったのです。
ストリートダンスを知って、「こんな楽しい世界があるのだ」と心を奪われました。当初は、東京へ進学することに渋い顔をしていた両親を「司法試験を受けること」を交換条件として説得し、上京しました。

▼司法試験への挑戦
早稲田大学に入学してしばらくは、サークルやダンススクールに通って、チームメイトとダンスに明け暮れる毎日でした。楽しさのあまり時間を忘れてダンスに夢中になっていたように思います。

しかし、親との約束でもあった司法試験を受けるため、大学2年からは司法試験予備校に通い始め、ダブルスクールの生活が始まり、ダンスも段々とセーブするようになりました。

しかし、現実は甘くはありませんでした。大学4年で初めて司法試験に挑戦しましたが、結果はあっけなく不合格。そこから3年間、司法浪人としての生活が始まります。最後の年は、部屋のテレビもパソコンも処分し、自分を追い込んで必死で勉強をしました。もうこの挑戦で最後にしようと決めて、全力を出し切った4回目、ついに合格を果たしたのです。

力を出し切り、試験が終わった後、ふと見た外の風景は、信じられないくらい鮮やかな緑色の木々でした。それまでモノクロだった世界に、一気に色が戻ってきた感覚を今でも鮮明に覚えています。

▼最初のキャリアで学んだ貴重な“財産”
その後、司法研修所を経て、26歳で弁護士となり、とある法律事務所に就職しました。
そこでは、ゼネコン関連の建築紛争や独占禁止法違反といった企業法務から個人案件まで多種多様な業務を経験させてもらいました。

そこでの経験で印象に残っていることが2つあります。
ひとつは、苛烈な取り立てが社会問題化していたある金融系企業グループの破産事件で、破産者側の代理人を務めた経験です。かつてカリスマともてはやされた元経営者のもとで進められた難しい事件でしたので、弁護士として大きく鍛えられました。
それ以上に財産となったのは、その元経営者の覚悟や生き様に間近で触れられたことです。その企業グループの経営に関して非難されるべき点が多々あったことは事実ですが、彼は、どんなに厳しい局面でも、少しも悲観せず、決して諦めず戦い抜き、最後には公訴事実の多くで無罪を獲得したのです。その危機対応能力、リーダーとしての立ち振る舞い、意思決定スピードの速さなど、「カリスマ」と呼ばれた経営者の生き様のようなものを学ばせてもらいました。
そして何より、「諦めずに戦えば、未来は拓ける」ということを、実感をもって心に刻んだ経験でした。

もうひとつは、仕事のスタイルや価値観がまったく異なる2人のパートナー弁護士から学んだ経験です。
就職した事務所には2人のパートナー弁護士が在籍していました。
一人は、効率を重視するスタイルで、ポイントを的確に絞って要点を突き、仕事のスピードも速い。報酬も高かったのですが、それに見合った成果を出し、クライアントの期待に確実に応えていました。
もう一人は「職人肌」で、時間をかけても全ての論点を調べ上げ、納得できるまで掘り下げて仕事を進めるスタイルでした。それでいて報酬は一般的な水準で、顧客から感謝を寄せられていました。

このように、スタイルも価値観も正反対ともいえる2人の弁護士のもとで学べた経験は、私にとって非常に貴重でした。のちに独立して事務所を立ち上げる際、自分なりのスタンスを考える大きなヒントになりました。

やがて、パートナー弁護士にも昇格し、14年半在籍しましたが、40歳という人生の節目を迎えた時、自分のやりたいことを実現するために独立を決意したのです。

【インテアス法律事務所の使命】市民社会と経営者のエンパワーメントを目指して

インタビュー画像

▼事務所設立につながる原体験——共助の仕組みづくりの必要性
独立当初は、「弁護士としてどのような価値を提供したいのか」、「自分の人生の何に時間を使いたいのか」と真剣に向き合いました。
その中で、企業法務に加えて、NPO法人や公益法人といった「市民社会のエンパワーメント」にも関わっていきたいという想いに至りました。そして、そうした分野の支援を仕事にしていきたいと考える弁護士たちが集う、特色ある事務所をつくりたいと考えました。

「市民社会のエンパワーメント」というテーマに興味を持つようになったのは、弁護士になって2,3年目のことです。
少年事件の付添人として子どもたちと向き合う中で、その背景には貧困やDV、教育格差といった家庭や学校に起因する問題があることを改めて実感しました。
ただ、このような環境が変わらないままでは、いくら目の前の事件を支援しても、非行のループを繰り返してしまうのです。表面的な支援だけでは、根本的な課題の解決にはつながらない——。
そう痛感した経験が、「社会の構造自体に働きかけていく必要がある」という意識へとつながっていきました。そこから、NPO法人や公益法人など、社会課題の根本に取り組む組織の支援に関心をもつようになりました。

さらに、東日本大震災の際にも、立ち止まって考えさせられました。当時は子どもが生まれたばかりだったのですが、東京でも一時的に取水制限がかかるなど、明日への生活に不安を感じる時期がありました。
その時、「どうすれば、自分の子どもや次世代が、活き活きと暮らせる社会を残せるのか」と、強く胸を突かれる想いが生まれたのです。

共助の循環を育み、社会全体で支え合える仕組みをつくる——こうして、共助の仕組みを支えるNPO法人など非営利組織の支援、その必要性を深く意識するようになりました。

それから、勉強のためNPO関係者が集まるイベントに参加しました。
ちょうど社会の流れが変わり始めた時期で、クラウドファンディングが登場し始めたり、ファンドレイザー(NPOや公益法人などの活動を支えるために、寄付や協賛を集める専門職)の資格制度が立ち上がったりと、新たな動きが生まれていました。
そのイベントで出会った方に声を掛けていただき、資格制度の立ち上げ支援などを手伝ううちに、段々と深く入り込み、気づけば本格的な支援をするようになったのです。
ただ、弁護士一人の力には限界があると感じ、同じ志を持つ弁護士仲間を増やしたいと「NPOのための弁護士ネットワーク」という団体を2013年に創設しました。

▼もうひとつのテーマ——社会貢献の“インフラ”がない“!
もうひとつ、事務所設立のテーマになった出来事があります。
独立前に在籍していた事務所で、あるクライアントから「子どもがいないので、自分の死後の財産を社会貢献のために寄付したい。どこに寄付すればいいのか。」と、相談を受けました。

私は、寄付先候補となる非営利団体の業界を調べたのですが、驚いたのは、一般の人が団体を比較検討できるようなサイトやデータベースがほとんど存在していないことでした。
団体のガバナンスや活動の透明性を判断できる基準も整っておらず、寄付のアドバイスをしてくれる専門家もいません。さらに、寄付金を基金として預かり、基金として活用してくれるような仕組みもほとんど見当たりませんでした。

この時に、この国に寄付の“インフラ”がない状況に違和感を強く覚え、その仕組みをつくっていく仕事をプロボノとして始めました。今では、これらの寄付のインフラを作る複数の団体で理事や監事を務めるほか、関連会社の「ミクスト株式会社」では、企業経営者らを対象に、寄付や社会貢献の支援させていただいています。
現在では、社会貢献に関心を持つ富裕層が資産を活用しやすいような社会環境も、少しずつ整い始めています。

法律を扱うプロとして、目の前のクライアントの支援にとどまらず、こうした社会課題の“種”を見つけ、応援し、必要な形で社会に顕在化させていく——。

この役割も自分の使命だと感じ、事務所を立ち上げました。以来、志を同じくする仲間とともに、様々な形で走り続けてきました。

▼「インテアス」—— 名前に込められた想い
インテアス法律事務所は、非営利組織から一般企業まで、経営者のビジネスと人生に徹底的に寄り添い、法律家としての枠を超えた価値を発揮することを目指しています。
企業法務支援にとどまらず、経営者が社会貢献に取り組みたいと考えた時にも、信頼できるアドバイザーとして伴走しています。

「インテアス」の意味は「インテリジェンス(知性)」と「未来(あす:明日)」を組み合わせた造語です。
私たちは、クライアントの「より良い経営」のために、知性という武器を持って、クライアントと社会のあるべき未来に貢献することを使命とし、この名前を命名しました。

また、非営利組織の支援とスタートアップから上場企業まで一般企業の法務支援、この両サイドの仕事をしているのは信念でもあります。
資金の出し手である一般企業と受け手である非営利組織の視点は全く違います。どちらの視点や関心も理解した上で、翻訳してつなげる役割がいないと、双方にとっても社会にとっても、よい価値を生み出すことはできないのです。

近年は、さらに法律面にとどまらない価値を顧客に提供したいと考え、経営を学び、MBAを取得しました。
私は、企業の社外役員なども担当してきましたが、法律の専門家の“弁護士“として貢献できることに壁を感じていました。もちろん法務も大事なのですが、会社が本質的な価値を高め社会に貢献することには、間接的にしか関われずに歯がゆさを感じていました。自分が“経営”をもっと理解し、法律家を超えた価値を提供できれば、会社や経営者のエンパワーメントができるかもしれないと考え、“経営”を学びに行ったのです。

▼経営者を支援することが社会のアップデートにつながる
2022年8月から2年間、野田智義さんが創設した「至善館(しぜんかん)」というスクールで学びを得ました。従来の米国型MBAとは異なり、人間性と社会性を兼ね備え、イノベーションと変革を牽引する経営リーダーを育成することを目的とした学びの場です。

ここでMBAを取得してから、自分自身も丸ごとアップデートされたような感覚がしています。
「経営とは何か」、「経営者とは何をすべきか」、「社会の変化を見据えた会社の成長戦略はどうあるべきか」など、法律家という枠を超えて、経営者と対等に議論を交わせるまでに生まれ変わったと感じています。今後は若い経営者の育成にも携わっていきたいと考えています。

社会全体がより良くなり、人々が幸せに生きられるためには、様々な組織の「経営力」を高めていくことが不可欠です。経営力が高まれば、経営者自身の幸福や充実感も増し、彼らが生み出す価値によって、社会全体にもポジティブな循環が生まれます。

弁護士になって22年間、多くの企業の経営に関わらせていただきましたが、経営者が成長し、その輪が広がることで社会は変えられると私は確信しています。

さらに、NPO法人など非営利組織の支援を通じて、次世代によりよい社会を引き継ぐ取り組みにも力を入れ続けていきます。双方に関わり続け、市民社会と経営者のエンパワーメントに貢献し続けることが、インテアス法律事務所の使命です。

人は原点へと帰り、そして次世代へつながっていく

インタビュー画像

▼今後、会社で実現したいこと
これまで、人と違う道を選び、自分なりのやり方で進んできましたが、残りの人生もまた、新たな道を切り拓くことに夢中でいたいと思っています。

10年という時間があれば、社会は変えられる——それを私は身をもって実感してきました。
例えば、「遺贈寄付」。亡くなった方の遺志や相続人の意志により、財産を自治体やNPO法人、学校法人などの公益団体へ寄付する仕組みです。
かつては馴染みの薄かったものですが、多くの関係者の努力のおかげで、今では市場化され、一般的な選択肢として認知されるようになってきました。
私自身も、様々な方が健全な形で遺贈寄付を行えるように、この10年以上、懸命に取り組んできました。そして今、ようやくその取り組みが“形”となり、多くの人の手に届く仕組みへと育ちつつあります。10年という時間をかければ、社会という大きな存在にも変化を起こすことができるのです。

自分の残りの人生を考えた時に、あと2回はそうした社会的な変化を起こすチャンスがあると考えています。
次世代に残せるような道を、少しでも形にしたいのです。たとえ小さな道であっても、それが次の世代にとっては“当たり前”になり、その上に文化は積み上がっていく——。
大きな文化の流れに一石を投じられたら、これ以上の喜びはありません。

ここ数年の目標のひとつは、遺贈寄付が地域に根付く仕組みづくりです。
地域で亡くなった方の遺志を受け継いで、その方の財産が地域に還元できるような仕組みを形にしていきたいと考えています。今まさに、地方銀行の方々と一緒に、寄付財産を地域でファンド運用できる仕組みづくりに取り組んでおり、このモデルを全国へと広げていくことが、今のテーマです。
それを形にした先に、また新たなテーマを見つけ、道を切り拓いていきたいと考えています。

▼さいごに
私は、よく「弁護士らしくない」と言われることがあります。
恐らくそれは、「既存の型にはまりたくない」、「誰も選んでいない道を行きたい」、という想いを持ち、これまで歩んできたからだと感じています。

実は、その原点にあるのは大学時代に夢中になった「ストリートダンス」にあります。
ストリートダンスの世界ではオリジナリティが一番大事。ダンスの技術や見た目の良さではなく、いかに自分らしさを表現し、オンリーワンになれるかが“肝”。自己表現が苦手だった私が、ストリートダンスに出会い、やっと自分らしい表現をすることができたのだと思います。

そうした意味では、今では「弁護士」という方法で「樽本哲」という生き様を表現しているのかもしれません。
弁護士の枠にとらわれずに、「“弁護士”である樽本哲」として何ができるかを考え、社会に貢献してくのが自分らしいあり方だという考えに辿り着きました。

だからこそ、「新しい道を切り拓いていきたい」という人を、心から応援しています。
そして弁護士の業界からも、弁護士の枠を超えて色々な可能性に挑戦していく人がもっと増えていくことを願っています。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。

profile

氏名
樽本
役職
代表弁護士

Introduction

企業名
インテアス法律事務所
所在地
東京都千代田区平河町1丁目4番15号
事業内容
経営者のビジネスと人生に徹底的に寄り添い、企業法務から事業承継、M&A、そして社会課題に取り組む非営利組織の支援まで幅広く手がけております。
企業サイト
https://inteasu.com/
Blog
https://inteasu.com/column/
上に戻る